■He is ...har?■



そもそものはじまりはなんだったか。別に『彼』に気があったとかそういうわけじゃないのだけれど、いつの間にかそうなっていた。




「ススム、重いからさっさとどいてくれないか」
そもそもあまり表情の変わらないはずの彼もさすがに真っ赤になってぼくを押し退ける。だけれどこの状況でそれは不可能だった。

頭上にあるブロックを押さえておかないと、アンナもろともぼく――ホリ・ススムも潰されてしまうから。


「ストップストップ!もうちょっと良く考えてよピンチなんだってば!」
「だらしないな相変わらず!そんなブロック壊してどこかに天井作れよ!」
「ブロック押さえながら片手でそんな事出来るかぁーーーー!」
「お前それでもミスタードリラーか!!」
「カンケー無いよそんな事!!」

もう十数分ほどこんな口論が続いている気もするけれど、さすがにこの状態でいるのも体力の限界だった。
「お、おい、ススム…大丈夫か?」
……大丈夫だったら何か無駄口きいてると、思う…
雪崩が起きた際にアンナのドリルはどこかに行ってしまうし、ぼくのドリルは重いタイプなので片手では操作できない。
とするともう、残された脱出法はこれしかない。
「アンナ、重たいだろうケドぼくのドリルで掘り進んで。どこかに天井を作れば、きっと助かるから」
「何?お前、ドリルを他人に預けようというのか?」
アンナは信じられない様子でぼくを見た。
「今そんな事言ってる場合じゃないだろ、はやく!」
「……わかった」


数十分後、ぼくたちは無事に地上に戻ることが出来た。



「はー、助かった〜」
久々に死にそうな思いをすると、新鮮な空気がとても心地好い。
ドリルスーツのまま芝生に寝転ぶと、ぼくは頭上に出来た影にふと目を開いた。
「なんだ、アンナか」
「なんだもないだろう、さっきまで生死の境をともにした人間に向かって」
「あー、うん。そうだね。……久しぶりに死ぬかと思った」
「間違いなく一歩手前だった。…だけど生きてる」
なんだか、今日は珍しく素直だな。そう思っていると、アンナはぼくの隣に座り込んだ。普段ならすぐにそっぽを向いて帰るのに、どうしたんだろう。
「その……ありがとう」
「……ぇ?」

思わず自分の耳を疑った。アンナに礼を言われるなんて。
「お前がドリルを私に貸さなかったら、多分二人とも下敷きだった」
「……アンナ?」
ぼくは起き上がってアンナの顔を覗き込む。なんでか困ったような顔をしながら、アンナはぼくの頬に一度だけキスをした。

――え?

「文句はその鈍感なおしてからしてね」


かすかに頬を赤くしてそう呟くと、アンナはそそくさと去って行ってしまった。


アンナの姿が見えなくなってから漸く、ぼくは赤面した。

ススム君いつアンナが女の子だって気付いてくれるんでしょう…気付くまでの間どんなにおめかししようとどんなに女の子らしく振舞おうと、男の子だと思われるアンナ…カワイソウ、女としてなんか寂しい…っ
そしてこの時点でもススムはアンナが男の子としか認識していないで、「プチ〜…、ぼく男の子に好かれちゃったみたい」とか家でこぼしてたりするとかなり萌えです
なんだか偏った萌え方ですみません…しかしこんなアンナだからこそこんなススムあり、みたいな。
ぶっちゃけミスタードリラーって小説向けじゃない…ッス…ね!げっふん!
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